2016.05.10 Tuesday TBI2016参戦記 DAY2
(注:本記事では、会場やルートの雰囲気をお伝えするために、SSER公式ブログより写真を何点かお借りしています) ■4/30(土) DAY-2 TOTAL 531.86km DIRT 150.02km 5:00 iPhoneのアラームが鳴った。さっき晩ご飯を食べ、寝袋にもぐりこんだばかりのような気がする。実際のところ、三時間ちょっとしか寝ていないのだ。 狭く薄暗いテントの中で最初にやったことは、コンタクトレンズの装着だった。僕は普段は、近視用のワンデーコンタクトレンズをつけているのだが、このレンズでは、乱視を矯正していないため夜の視力がそれなりに落ちてしまう。都市近郊は道も明るく、普段の慣れた道であれば運転にまったく支障はないレベルだが、街灯一つない田舎道や林道を、コマ図だけを頼りにまったくの予備知識なしで運転するとなると、それは話が違う。そこで、TBIに備えて、眼科で乱視を矯正するワンデートーリックコンタクトレンズを処方してもらった。 近視用のワンデーコンタクトレンズは入れる向きは関係ない。しかしトーリックレンズは、レンズに刻まれているマーカー(極く薄い縦線)が下方向になるように装着しないと、正しく乱視矯正が出来ない。 長年コンタクトレンズを使っている僕は、近視用レンズであれば、鏡など使わなくても二、三分もあれば両目のレンズを装着できるのだが、トーリックでは時になかなかこのマーカーが見つからず、時間がかかってしまうことがある。この日も少々手間取って、10分ほどかかってしまった。ラリーにおける朝の10分はとても貴重だというのに。 それから、寝袋やマットをたたみ、ウエアやプロテクタを装着し、あとはヘルメットとグローブを装着したら乗れそうな状態になってから、テントを這い出した。この時点で五時半過ぎくらいだが、まわりのテントはすでに半分くらいは畳まれていて、早い人はすでに5時30分から提供されている朝ご飯を食べはじめていた。手慣れたラリーストは、とにかく朝の準備も早い。 ![]() ![]() 朝露に濡れたテントを乾かす間もなく畳み、荷物をパッキングして、オフィシャルにあずけるダッフルバッグ(22.5kgまで)と、ミサイルサポートカーにあずける荷物に分け、それぞれの場所に運ぶ。この時点で、もう六時をだいぶ過ぎてしまい、朝ご飯は諦めた。これから朝食を食べて、食器を洗って片付けるなんて僕には到底無理だ。六時半からはブリーフィング、七時になればスタート。これはもう、こちらの都合がどうあれ、絶対に変わらない鉄の規律なのだ。 ブリーフィング会場近くに貼られている、DAY-1のリザルトを見る。 ![]() 【クリックで拡大します】 DAY-1の場合は、SSが一カ所しかなかったため、「SS-1の順位」=「DAY1だけの順位」=「この日までの総合順位」となる。初日だけあって、SS不通化のペナルティーを受けているライダーは三台しかいない。 30位か…。 出走前には、「順位は気にしない、あくまで完走が目標」だと言っていたけれど、やはりこうしてリザルトが出ると、気になる。少しでも速く走って、ひとつでも順位を上げたい、という欲が出てきた。 この日のブリーフィングでは、ちゃんとガムテープをペンを持参した。コマ図の修正はなかった。CP/SS/給油ポイントもメモした。よし、大丈夫だ。 ![]() 【これはなおとくんのガムテメモ。みんなそれぞれ自分が見やすいようにメモをとってます】 スタート順は、前日の総合成績順(ただし50ccのアドベンチャークラス二台は常に先頭)となる。30番ということは32番目スタートなので、7時16分頃のスタートだ。今日は少しでも早くビバーク地に着いて、せめて12時から5時間くらい寝れないかな…という気持ちでスタートした。3時間ちょっとしか寝ていない割には、不思議と元気だ。 ![]() 6km地点から朝のSS。SSは初日からの通しナンバーになるので、これがSS-2ということになる。 コマ図を見る限りは極くシンプルなので、迷うことはなさそうだ。 ![]() しかしながら、SSに入ると、朝一番で体が目覚めていないのか、思ったほど体が動かない。うまく曲がれず、コーナーをオーバーランしたりして、SSを攻めているというよりは、無難にそこそこのスピードでツーリングしているようなペースになってしまった。うーん…これでは昨夜のSS-1と変わらないな。 いや、まだまだ二日目がはじまったばかりだ。6日目のSS-11までが勝負。少しずつSSというものに慣れて、タイムをつめていけばいいんだ、と気を取り直して走り出した。 しばらく走っていると、自分でコマ図に塗ったマーカーがおかしいことに気がついた。 ![]() …しかも、二コマ連続で間違っている。道なりが正解なのに、左折方向にマークされているのだ。初日のブリーフィングの前に、あわてて塗ったからだ。ここでは自分で気がついてちゃんと道なりに走れたが、ほかにも間違ってマーキングしてる箇所があるかもしれないから、気をつけなければいけないな。 64キロ地点。右ターンしながら、ここは昨日も逆走で走ったような気がするな、と思った。そのまま走り続けると、コマ図では舗装の表示のままだが、道なりにダートに変わった。ダートにはタイヤの跡があったのでそのまま走り続けたが、その次のコマがいっこうに現れない。見落としたかな…と思った頃に、向かいから一台のバイクがやってきた。見ると、ミサイルファクトリーの小川さんだった。65のコマも67のコマも見つからないよね?と言う。そうですね、なんかおかしいのかなあ。僕の後ろにも一台ライダーさんがいて、三人でコマ図とにらめっこ。 ![]() 「あっ!!!」僕の後ろにいたライダーさんが叫んだ。「64km、右折じゃなくて直進!」 そう叫ぶやいなや、エンジンをかけて走り出した。ミサイル小川さんも僕も瞬時にして何が起こったかを悟り、それに続いた。 小川さんは、単に勘違いで曲がらなくていい分岐を曲がってしまったそうだが、僕の場合は、完全に「自分の塗ったマーカー」に騙されてしまった。このミスコースをきっかけに、僕はもう、今後コマ図にはマーカーを塗らないことを決めた。ちゃんと正解が書いてあるコマ図に、わざわざ自分が間違いを書き込んでしまう可能性があり、却ってリスクが増える行為だと悟ったのだ。もしマーカーを塗りたいのであれば、瞬時に判断が必要なSSの分岐だけにすればいい。SSの数コマだけであれば、間違いなくマーキングできるだろう。リエゾンではそこまで素早い判断は必要ではないし、マーカーが塗ってないほうが、却って色の情報に頼らずにしっかりコマ図のディレクションを確認することにつながると思う。この間違いは、今後のコマ図ラリーのために必要な経験だったのだと思うことにした。人は、自分の失敗からしか学べない生き物なのだ。 ここでのミスコースのタイムロスは、「いも天おいしいよ」と書いてあるコマで、小休止しておやつの「いも天」を食べているみんなに追いつくことでチャラにできた。朝ご飯も食べていないのでかなり空腹だったが、補給食のウイダーインゼリーとカロリーメイトを手早く食べて、「いも天」はあきらめ、先を急ぐことにした。 CP1を通過。ロスタイムは取り返した、もう大丈夫のはずと思って走り出した、本日何本目かのダート。 今日は、全然写真を撮っていないなあ…と、ふと景色に見とれて気が緩んだ瞬間に、転倒してしまった。 ![]() シフトペダルがとんでもない方向に曲がってしまった。 工具を取り出し、メガネレンチをかませて、元通りではないが、使える形状に修復。本当に、事前に鉄のシフトペダルに換えておいて良かったと心から思った。アルミペダルだったら、おそらく折れてしまっていただろう。 ![]() 修理している間に、何台ものバイクが通り過ぎていくので少し気持ちが焦るが、実際にロスしたのはせいぜい20分程度なのだから、焦ることは無い。気を取り直して、CP2を目指す。 ![]() 途中でなおとくんと会って、しばしランデブー走行を楽しんだりもした。基本的にはルート上をおおむねひとりで走っているのだが、たまに他のライダーと一緒に走ると、一人のときより速く走れたり、そのライダーから走り方を学んだりできるのだ。 給油とトイレと補給食は常にセット。無駄に休憩せず、リエゾンを飛ばさずに走ることが休憩だと思って、淡々と進んだ。 ![]() 少々分岐がややこしいところもあったが、やがてCP2にたどり着いた。 その後、400km地点から先の、夜の林道のコマ図が複雑だった。 風車のそばから入っていく簡易舗装の林道と、その後の狭く分岐だらけの林道。真っ暗で分岐が多く、走っていると心細くなるような道で、向かい側から戻ってくるライダーと遭遇。「これ、おおてるん?」と関西弁で話しかけてきたのだが、今にして思えば、あれは誰だったんだろう。もしかしたら泉本さんだったりして。 このあたりで、だいぶ多くのライダーが翻弄されたようだ。 ただ、ここの林道は複雑ながら、僕には「これで合っている」という確信はあった。一日目が終わった後、多くのライダーが「タイヤ周長があわない、距離が合わない」と言っていたのだが、僕のrc-7はほとんど距離があっていたからだ。手動でラリーメーターのタイヤ周長を合わせるライダーは、だいたい2100前後の数字から合わせて行くので、少しずつ下げて行っても、今回の正解値である周長2050前後という、小さすぎるとも思える数字にたどりつくのに時間がかかったようだ。僕は、rc-7の自動周長補正機能を使用して、初日の30kmほどでこの周長にたどりついていた。全回のいわき林道ツーリングの教訓を生かして、数字が合うようになったら、自動補正機能はオフ。これで、ダートの一部をのぞいて、初日の早い段階から、距離はほとんど狂うことはなくなっていた。rc-7の自動周長補正機能は、使用していない人も多いようだが、これはrc-7のウリとも言える有用な機能だ。 それでもこの夜の迷路のようなダートの緊張感は高く、コマ図通りに舗装路に脱出し、コマ図に書かれていた430km地点のコンビニで、他のライダー二名に会えたときには、心底ほっとした。 ゴールまであと100kmということは、3時間以上はかかるわけだ。晩ご飯が食べられるのはまだまだ先だし、今日はそもそも補給食しか食べていない。コンビニでおにぎりを二つ食べてエネルギー補給。さて出発するかと思ったところに、なおとくんがやってきた。「今の林道やばいよねー。」「いやー。めぐが心配だよ。」そんな会話を交わしてから、一足先に出発した。 夜のSS-3。手前でコマ図を確認。 まあ、つまり道なりだよね。これは、間違えずにアケアケでイケるでしょう。 ![]() と思ったら、509.03kmのコマでやらかした。 橋を渡ったら、右からダートが合流しているように描かれているけれど、これは実際には正面の道なりにダートがある感じで、「道なり」の意識で行ったところ、ダートにつっこんでしまった。幸い、車体をそちらにつっこみながら「コマ図となんか違う」ということに気がついたため、大幅に通り過ぎることはなく、バイクにまたがったまま足で地面を蹴ってバックし、左のルートに復帰したが…またしても、SSをスッキリと全力では走り切れない結果となった。 SS-3を抜けたら、あと20km、なにもなければ40分ほどでビバークにつくはず。 ![]() 23:20ごろ 結局、前日と同じくらいの時間にゴール。 ![]() SS-3で分岐を間違えた話をしたら、トシヨシさんもミサイル小川さんもみんな同じことをしてたそうで…なおとくんは、その向かいのダートから、間違えたバイクが出てくるところだったんで間違えずにすんだとか。そんな話をしながら、みんな、とても疲れているんだけど、なんだか笑ってるんだよね。 もろもろ整備やマップの巻き直しなどがあって、25:00でピットエリアはまだこの状態。 ![]() マシンをパルクフェルメに突っ込み、テントを貼り、晩ご飯を食べたら、今夜もまた三時間しか眠れないんだな…。 そしてこのときにようやく悟った。これは、最初から最後まで二、三時間しか眠れない日々が続くラリーなんだということを。明日は期間中で最長距離を走る日だから、ビバークへの帰還がなおさら遅くなることは間違いないだろう。もう、腹をくくるしかないんだ。 JUGEMテーマ:車/バイク ![]() |